モッツァレラチーズが伸びる原理って何だろう?
こんな疑問にお答えします。
ピザチーズやモッツァレラチーズを始め、チーズは「伸びる」という特徴を持っている不思議な食べ物です。ほかにも「さけるチーズ」のように糸状になったり、カマンベールのように熟成が進むとやわらかくなったりします。この理由を初心者にもわかりやすく解説してみます。
「丹波チーズ工房」6年目の私がお伝えします。内容はかなり高度なのですが、なるべく噛み砕いていきます!
チーズの物性を生み出すカゼイン
伸びたり、固まったり、とろけたり、さけるチーズのように糸状になったりとチーズは様々な物理的性質(物性)を持っています。
この不思議な原理は、カゼインが生み出しているのです。
カゼインは牛乳中のたんぱく質の8割を占めていて、チーズの骨格と筋肉のような役割をしています。そのカゼインに乳脂肪や乳糖がくっついてチーズの体ができています。
お餅が伸びるのは「でんぷん」が加熱や圧迫によって繊維構造が変化しています。
チーズは糖質ではなく、タンパク質のカゼインの変化によって物性が変化しているので、構造的にはやや似ていますが、中身は全く別物です。
カゼインの特徴的構造
カゼインはアミノ酸がたくさん集まったタンパク質で、そのアミノ酸の配列に特徴があります。それは、プロリンというアミノ酸がバラバラにまんべんなく入っていることです。詳細は割愛しますが、これにより、カゼインの特殊な耐熱性が生まれています。
何故カゼインがこのような特殊な構造なのか、はっきりとした理由はわかりませんが、「子牛が消化しやすいように」母牛が生合成したものと考えられています。
他にもカゼインの集合体(カゼインミセル)のカルシウム結合の構造にも、耐熱性やトロっととろける性質の原理があったりしますが、これ以上はめちゃ難しいので飛ばします!(笑)
知りたい方は下記の雪印メグミルクさんのサイトへ
https://www.meg-snow.com/cheeseclub/magazine/article/1903_melty.html
熟成が進むと伸びなくなる
当工房の一年熟成ゴーダチーズは、加熱しても伸びることはあまりないのですが、実は「できたて」の頃は伸びるんです!
できたての頃は、タンパク質(カゼイン構造)がそのままちゃんと残っているので、熱を加えるとびよーんと伸びます。熟成が進むと、そのたんぱく質がアミノ酸に分解されていくので、次第に伸びることはなくなるのです。
他にもクリームチーズなどは、乳酸発酵を進め、製造段階でタンパク質がかなりバラバラになってしまうので、物性はあまり持ちません。
まとめ
上の写真はスノーホワイトの熟成が進んでトロっとしてきたところです。かっちりスクラムを組んでいたタンパク質構造が、熟成によって少しづつ崩れて、トロっと溶け出してくるんですね。
チーズはなぜ伸びるのか、ちょっと消化不良になってしまったかもしれません。書いてみたものの、正直難しすぎました(笑)
まあ「カゼイン」という特別なたんぱく質が関係してるんだなーという程度のことが伝わればうれしいです。
何か質問がありましたら、お問い合わせフォームより気軽に質問いただけると嬉しいです。一緒に日本の酪農文化・ナチュラルチーズ文化を盛り上げていきましょう!
以上です。